熊本地震から4年 菊池農場の繁殖牛舎再建
ドリームグループ(オーガニック九州産直クラブ/ナチュラルナチュラル/ロンドンナチュラルグループ)代表の吉田登志夫です。
熊本地震から4年、菊池農場は牛舎2棟全崩壊から繁殖牛舎を再建し、頑張っています。
2016年4月の熊本地震で牛舎2棟が全崩壊し、農場経営は大きな痛手を負いました。地震で牛2頭死亡、数頭負傷、手持ち牛舎が使えなくなり約70頭のあか牛を仮牛舎にギュウギュウに押込みました。母牛繁殖で仔牛をとり24ヶ月肥育するという「一貫飼育法」の菊池農場では、突然の被災に飼育環境牛が悪化し、十分な給餌が行き渡らずに大きく成長してくれず、苦しい台所となりましたが、昨年春に再建した新しい繁殖牛舎に母牛が入り、昨冬には15頭の仔牛が生まれてくれました。育てさせていただくからには「出来る限り最高の環境で育てる」というアニマルウェルフェア(動物福祉)の考え方を学びながら、自家生産の無農薬イタリアン牧草や菊池川河川敷草などの沢山の草を食べさせて、牛本来の赤身がおいしい牛肉として消費者の皆さんにお届けしていきます。
ドリームグループが菊池農場を立ち上げたのは、産直クラブをスタートさせたのとほぼ同時期の17年前に遡ります。「生産者と消費者を対等な関係でつなぐ産直クラブをつくろう」と夢広場店舗を基盤に宅配事業をはじめたと同時に、「僕たち自身も生産することの大変さと大切さを身につけよう」と農場運営をグループとして乗り出しました。その頃知り合った「走る豚」の武藤計臣さん・やまあい農場の同じ山中に土地と家の売物があり、そこを産直クラブ会員さんから出資してもらった「食べもの夢基金」で購入し、「手を挙げたクラブ役員」が一人で入植して菊池農場の歴史は始まりました。
最初に「牛」の肥育をやってみました。牛の飼育について、ずぶの素人で右も左もわからない私たちは、近くの牛農家さんにお願いして研修に通わせて戴きました。それから小さくて飼いやすいということでジャージー牛(花子)をお世話してもらい、恐るおそる見様見真似で飼育しました。そろそろ出荷時期かな?、と20ヶ月が経った頃、農場スタッフから「大変です、花子の目が見えないみたいです」と緊急報告が入りました。慌てて、教えてもらった牛農家さんに聞くと「ああ、それは普通だよ。太ってお腹にサシ霜降り(脂肪肝)をつくるためにビタミンAを食事制限するのでビタミンA欠乏症になって目が見えなくなるんだよ」とのこと、私たちにとっては青天の霹靂!びっくり仰天でした。
それから私たちは「産直クラブが育てる牛はどんな牛か?」の模索と牛飼育の勉強がはじまりました。「牛は元々、草食動物で、太らせ霜降りをつくるための日本畜産の穀物主体給餌法は牛の本性には合わない給餌法であることに気づき、たどり着いたのが「肥後のあか牛」でした。熊本地方で歴史的に阿蘇山系で放牧されて来、その頃は「絶滅危惧種」として細々と飼育が続けられていた「あか牛」こそが「牛本来の餌である“草”を食べて育ってくれる産直クラブが望む牛」であると確信し、以来15年、肥後あか牛飼育に励み、「牛本来の赤身がおいしい健康あか牛」をお届けしていきます。
コロナ対策 ドイツ・メルケル首相の言葉 食品流通という社会的事業
ドリームグループ(オーガニック九州産直クラブ/ナチュラルナチュラル/ロンドンナチュラルグループ)代表の吉田登志夫です。
コロナウィルス汚染での緊急事態宣言が出される中、ドリームグループ 各部署もテレワークや感染防止策に各現場は頑張っています。
スタッフの皆さんにはドイツのメルケル首相の言葉を添えて、食品流通の業務を継続していく旨のお願いを出しまた。
ドリームグループ で働くスタッフの皆さん
「コロナウィルス関連 緊急事態宣言を受けて」
2020年4月8日ドリームグループ 代表 吉田登志夫
日々、コツコツと誠実に仕事を重ねていただき、ありがとうございます。
昨日4月7日に政府から「コロナ関連 緊急事態宣言」が出されましたが、ドリームグループとしての当面の対応を以下のように考えています。
◯業務は、コロナ汚染拡大防止対策をできるだけ講じた上で、通常営業を維持継続します。
・最前線の店舗、配送とそれを支えるバックの物流仕分け・卸・企画・製作・経理などの業務を止める事は、グループの経営継続ができなくなる事を意味します。
◯会社としては、店舗と宅配のお客様対応以外の来客・訪問対応は自粛する事とします。
◯スタッフ各自は、場面場面での手洗いをこまめに行ってください。
◯お客様対応時には、マスク着用をお願いします。
◯公共交通機関を利用しての通勤は避けたいので、出来る限り自力での通勤をお願いします。難しい場合は部署の責任者に相談してください。
グループのロンドンnatural natural の2店舗は、医療関連以外の事業所が閉鎖されているなかでも食品流通の営業を継続しており、スタッフは「キーワーカー(大切な労働者)」と呼ばれて社会的にリスペクト(尊敬・尊重)を受けおり、スタッフが食品流通の仕事を継続できるように、その子ども達は休校の学校でも特別に預かってもらえています。この様な事態のなかでは、生産者と消費者の間に立って大切な食べ物を届ける私たちの仕事の社会的役割の重要さを改めて認識します。
ドイツのメルケル首相は「普段めったに感謝されることのない人々にも感謝の言葉を送らせてください。スーパーのレジ係や、商品棚を補充してくださる方々。彼らは現在、最も困難な仕事の1つを担ってくれています。仲間である市民のために、日々働いてくれて、私たちの生活を支えてくれてありがとうございます」と語っています。
今後、スタッフの皆さんの中でコロナ感染する方が当然出てくる事も考えられますが、お互いに気軽に相談し合いながら、支え合いながら越えて行きましょう。
また、新しい状況の変化などがあれば、皆さんへ報告を差し上げます。何か困った事や不安な事があれば、部署の責任者に申し出てください。
皆さんと健康な生活と仕事を継続できるよう、力を合わせていきましょう。
ロンドンからの報告ーコロナ拡大と店舗営業
ドリームグループ(オーガニック九州産直クラブ/ナチュラルナチュラル/ロンドンナチュラルグループ)代表の吉田登志夫です。
コロナウィルスで厳しい事業所閉鎖や外出制限措置が取られいるロンドンからグループ店舗natural naturalの様子の報告が来ました。
ロンドンでは現在、医療と食料品関係以外の事業所は閉鎖されています。日本食品&オーガニック食材を販売しているnatural naturalフィンチリー店&イーリング店は通常通りの営業をしており、絶え間なくお客様が来店されています。店ではお米や麺類、納豆などが通常の2−3倍売れており、お弁当・惣菜もよく出ているそうです。
送られてきた棚の写真を見ると麺類やお菓子の棚が空になっています。去年から九州野菜を空輸で毎週出していて、とても良く売れてますが、コロナの影響で日本からのフライトが次次とキャンセルになり、担当者は頭を抱えています。産直クラブや福岡のnatural natural 店舗で人気の中村さんの人参は入荷待ちです。レジでは感染に配慮して現金は扱いません、すべてクレジットカードのみで支払いをしていただいてます。
ロンドンでは医療や食品流通に携わる労働者は「キーワーカー」とリスペクト(尊重)され、学校が休校になってもキーワーカーの子供たちは学校で別途預かって貰えるとのことで、学校に通う子どもがいるスタッフはとても助かっているようです。鍼灸整体アロマのナチュラルクリニックは緊急事態宣言が出されてからは休業してますが、イギリス政府は雇用者賃金の80%を補償するとしています。自営業者も保証されるそうで、とても助かりますね。
イギリスでは50−60%の人までコロナ感染が広がって、コロナウィルスと人間社会が共存する形で落ち着くと言われているようです。日本でも徐々にコロナ感染が広がってくるでしょう。日本各地の産直クラブや店舗でも、今後スタッフが感染することは当然有り得る事と想定して、「その時に人々の生活を支えるキーワーカー組織としてどう営業を継続するか」を考え、その日に備えたいと思います。
あか牛仔牛:雪の死亡と教訓と決意
ドリームグループ(オーガニック九州産直クラブ/ナチュラルナチュラル/ロンドンナチュラルグループ)代表の吉田登志夫です。このところ、「牛飼日記」が続きます。
牛舎がある菊池は、もう春爛漫です。特に僕らが拠点としている旭志村は水仙と菜の花と桜が満開です。
でも桜が散る前に、下痢をしてウィルスに感染しミルク哺乳をしていた仔牛の死亡について報告しておかねば・・・。
菊池に初雪が降った2月半ば、下痢をして繁殖舎の母牛から離して肥育舎に移して治療とミルク哺育をしていた3頭仔牛の中の一番チビが死んでしまいました。
僕は初めての死亡処理をしたので報告と写真を記します。
朝餌やり時に、前夜まで点滴治療をしていたその子の死亡を発見し、久川さんに「出生届け書類(生後1ヶ月)」を作ってもらい、死体と一緒に畜産協同組合中央支所に持っていき、その子が生きている時につけるはずの耳標(全ての牛に必須)をつけてもらい、次に「死亡処理願い」を交付してもらい、七城の屠場裏の「タンパクミール工場」に運んで「廃棄処理」してもらいました。処理費6500円でした。
その朝の菊池は初雪がうっすらと積もっており、まだ名前がなかった死んだ仔牛には「雪」という名前をつけてあげました。
この子の死亡からずっと考え、決意したことがあります。
それは「仔牛は母牛が育てる」という原則を持つということです。
風邪をひいて下痢などで体調が悪くなった仔牛は獣医さんに診てもらって注射などを打ちますが、基本人間がやれるのはここまでで、母牛に事故などがない限りは、仔牛だけを隔離して人間がミルク哺乳などで育てるのは僕ら人間の思い上がりではないかと感じています。僕らには仔牛を育てる事はできない、仔牛は母牛のみが母乳で育てるものということを感じています。仔牛が病気になっても、母牛の側において、徹頭徹尾、母牛に頼りながら仔牛の回復をはかるということが僕ら菊池農場の畜産の姿ではないかな。乳牛のホルスタインなどは仔牛が産まれると即日に母牛から離してミルク哺乳に切り替えるそうです。これは搾乳や次の発情・種付けなどの都合上、そのように設えられています。でも、菊池農場の草給餌主体で育てるあか牛飼育では、「生まれて3ヶ月まではどんな事があろうと仔牛は母牛の側で育ててもらう」ことを原則としたいと思う。それが自然であり、当たり前であり、それでしか仔牛は育たないと思います。
仔牛が体調を崩したら母牛につけたまま治療をして、もし、隔離が必要な時は母牛も一緒に隔離する。そのような考えを原則として、それでダメな時もあるだろうけど、その時はそれを受け入れる。母牛は仔牛授乳を1週間も止めると、もう乳は出なくなるそうです。仔牛は片時も母牛から離してはならない、というのが雪死亡を受けての僕の教訓です。
僕らがしなければいけないことは、いつも牛舎を清潔に掃除して牛にとって健全な環境をつくり、おいしい草を主体とした餌を十分に給餌し、牛にとっての(出来るだけの)最高の生活環境をつくる。あか牛を飼わせていただく限り、「ケアが十二分に行き届いた福祉環境で育てる」という考え方を仔牛:雪の死亡を受けて心の底に刻みました。
宮川ファーム「草育ちジャージー仔牛肉」
ドリームグループ(オーガニック九州産直クラブ/ナチュラルナチュラル/ロンドンナチュラルグループ)代表の吉田登志夫です。
ドリームグループ に新しい生産者ができました、熊本:菊池のドリームグループ 菊池農場のすぐ近くの段々畑を登って行ったところにある放牧地で牛を育てている宮川ファーム:宮川素子さんです。
ドリームグループ にはジャージー仔牛肉を出荷していただきます。宮川さんは牛飼育歴3年、菊池農場のあか牛の世話のお手伝いも週2日程していただいています。
宮川さんがジャージー牛を飼いだしたきっかけは「ジャージーのオスに生まれた子牛は廃棄される」と聞いたことから。ジャージーは菊池の隣の小国町のジャージー牛乳で有名ですが、メス子牛は乳を絞る母牛として大切に育てられますが、オスは肥育しても体が小さくて肉が少量しか取れないため、「育てても採算が合わない」と生まれて直ぐに廃棄されています。その事を知った宮川さんは「せっかく生まれてきたのだからそれなりの時間をいい環境で過ごさせてあげて、価値あるお肉として大切に食べてもらう道をつくりたい」と一念発起してジャージー肥育を始めたそうです。
宮川さんの牧場には牛舎がありません、24時間・365日完全放牧です。お産も自然の中でしています。牧草が豊かに生えた牧野でゆったりと過ごす、何とも羨ましい飼育環境、牛にとっては最高の環境です。「ケアが十二分に行き届いた福祉環境で育てる(アニマルウェルフェア)」という考え方は走る豚農法を拓いた武藤憲臣さんからもお伺いしたことがあり、ドリームグループ 菊池農場の目指すところでもあります。
今回出荷していただく「草育ちジャージー仔牛肉」は6ヶ月肥育牛で、ストレスがかかる除角・去勢もせずに、後期は非遺伝子組換え穀類飼料も与えて仕上げています。
ヨーロッパでは牛の骨髄などを牛の飼料として与えた結果発生したBSE(いわゆる狂牛病)への反省から、「本来の餌である草(グラス)で牛を育てる畜産農法(グラスグロウン、グラスフィード)」が主流になりつつあります。日本でも脂肪肝(サシ)を重視する肥育から、草を多食させて赤身が美味しい肉に仕上げる肥育に転換していく日がもうそこまで来ているような気がします。
仔牛肉は日本では殆ど食する事はできませんがフランスやイタリアでは最高級料理として重宝されており、特にジャージー仔牛肉は艶がありミルキーな味わいで超レア肉です。
菊池の里からお届けする「草育ちジャージー仔牛肉」を、自然な牧草地を思い浮かべながら楽しんでください。(ドリームグループ 菊池農場代表:吉田)